「えーどうしよっかなー」
「はあ?……そういえば君、電車で見たことあるな、絶対にある。綾と喧嘩してた奴だっ」
「喧嘩……あ、踏んだり殴ったりの?あんなもん喧嘩に入んねーよ、コミュニケーションだ」
菓はさらに頭蓋さんの機嫌を損ねている。もう泥沼に足を突っ込んでいる。
私と仲良しアピールをしてどうするんだ。……あれ?
「綾こいつとどんな関係なの!?なんか聞いててすごいムカつくんだけどーーえ」
私がとった行動に彼は硬直した。
隣にいる菓の腕に手を添えてやったのだ。当のやられた本人はというと面白そうに笑って噴き出している。きったねえ。
だっておかしいことに気付いたのだ。
なんで私は頭蓋さんの機嫌を損ねたくないのだろうか。
彼はただの隣人で、ご飯を作る代わりに食事代は出してくれる人で。とにかくただ付きまとってくる奴で。
それなら機嫌を損ねてもべつに問題ないはずなのだ。だから少しやってみた。それだけだ。
