「あ、緊急って書いてある」
件名の「緊急」の文字に慌ててスマホを手に取った。これはすぐに頭蓋さんに見てもらわなければ。
「頭蓋さん、メールきてますよ。緊急の連絡らしいですよ。早く確認してくださーー、あ」
先程よりも強く頭を揺する。柔らかい茶髪が一、二本抜けるがお構いなしだ。
しかしそのせいで、片手で慣れないスマホを持っていたのが悪かった。
親指が不意に画面をスライドさせてしまい、パスコードロックが掛けられていなかったそれはあっさりと"メール画面"ではなく"ホーム画面"を表示した。
「…………うわ、きも」
壁紙が、いつ撮ったのかわからない、横を向いた私だ。
これまでに何度かスマホで操作しているのを横から覗いたことはあるが、その時は別のものだった。
つまりこれを設定したのはーー。
そこまで考えて、昨夜私がテレビを見ていたとき、彼は何やらスマホをいじくっていたのを思い出した。
「……これこそお仕置きするところでしょ」
「ん?なに?第二ラウンドがしたいって?」
「狸寝入りか、この骨め」
とりあえずカメラアプリを起動して、パシャリと寝起きの彼を撮影する。
しかし距離が近いこともあり、角度が急で若干上目遣いの表情が艶めかしく映ってしまった。
まあいいか。設定画面に飛んで、壁紙変更のページに持っていく。
説明が必要な難しい操作ではないので、すんなりとお仕置きをすることが出来た。
是非とも職場で「自分の寝起きの写真を壁紙に設定しているナルシスト」と認識されてほしいものだ。