「だから、さ。ここってバーなわけで、酔う客だっているでしょ」
頭蓋さんはグラスをシンクに置いて、また私との距離を縮めてくる。なんなんだご飯作ってない恨みか!?
受けてたとうと睨みつけるものの、ぐいっと顎を掴まれれば何も出来ない。
「客にこういうことされちゃダメだよ、ってこと」
綾は無防備だから。そう言ってキスをする頭蓋さんは、どう考えても楽しんでいた。
だって手つきがいやらしかったからね。
「……麻野さん来ちゃいます、」
「大丈夫、今から俺の部屋行くから」
「は?いや、まだバイト……」
「もうすぐそこに麻野さんいるよ」
「え」
階段でニヤニヤと口元を歪めながら立っていたオカマには蹴りを一発お見舞いした。
初日だからこれで上がっていいと言われ、嬉々として私の腕を引っ張る頭蓋さんに仕方なくついていく私だった。
