「……そう」
「え?……ちょ、なんでこっちに」
私がカレーを食べ終わりそうな時、頭蓋さんはもう食べ終わったみたいでそろそろとこっちに近づいてきた。
テーブル越しの会話が、隣同士の会話になっていく。
最後の一口を食べ終わり、水を一気に飲み干したとき、ぐるりと世界が回った。
見ていた先には皿とコップがあるはずなのに、今見えるのは黒く微笑む彼だ。
「わ、」
「そのヘタレに今押し倒されてるのは誰かな?」
あまりに色気がない私の悲鳴に被さるように、唇にじわりと頭蓋さんの吐息を感じた。
途端身体が震えて、思わず目を瞑る。
「ご飯手伝ったお礼、ちょうだい」
耳元で囁いた頭蓋さんをゆっくり睨むと微笑まれた。そして熱い唇が降ってきて、手が鎖骨をなぞる。
いつスイッチが入ったんだこの男。
重ね合せるだけのキスは数度で飽きたのか、舌が私の唇の隙間をつつき出す。
しかし悲しいかな、今の私たちの口の中はカレー味だ。そんなキスなどしたくない。
私は自由な手で頭蓋さんの脇腹をくすぐり、彼が身をよじった瞬間を狙って彼の下から這い出た。
あっけにとられている彼を尻目に、シンクへ急ぐ。
「歯を磨くので」
「ムード無い!!」
「なんとでも言ってください」
頭蓋さんはムードがどうのと文句を垂れていたのに、数秒後にはあっさり共に歯を磨きにきていた。
やっぱり流されやすいし、ヘタレだ。
と思っていたら、口をゆすぎ終わるとタオルで拭く間もなくもう一度唇を重ねられる。
