駅の改札を抜け、ちょうど来た電車に乗って喋る。どうやら電車は途中まで一緒のようだ。
「…そんなに友達友達って言ってるけど、高校が一緒だった人はいないの?」
生徒会長だったようだし、人望はあつそうだ。それに講義が終わったあとの電話では時々「菓くん!」などの声も聴こえていたし。
そう問えば、彼は少し眦を下げて笑った。
「いるけど、いない。生徒会のメンバーは家庭の諸々でバラバラだ。後輩が大学にいるわけないしな。それに大して仲がいい奴もいない」
「悲しい人生ね」
「お前に言われたかねーよ」
鞄で鳩尾を殴られた。
「私は意図して作らないの。邪魔だし集中できないし」
少しヒールのある靴で菓の足を踏みつける。ぐりぐり押す。押す。
「ッつ…!!……彼氏も?」
「なんでさっきから彼氏ばかり気にするの。やめて」
ああ、どうしてだろう。“彼氏”と耳にするたびに“彼”を思い出している。
やっぱり付き合ってもない曖昧な関係だから?
