「高校時代は生徒会長で、チャラチャラした変な男、ぐらいしか」
「それ貶してね?」
そう言いながら、不快そうな気配もなく笑う彼は、本当に人気者なんだろうな。
ウェイターがやってきて注文を笑顔で急かす。時々菓と喋ってるところを見ると、知り合いなのかもしれない。
一応パスタとお茶を頼む。菓はコーヒーだけ頼んでいた。昼を誘ったくせに自分は食べないのか。
「桐島ってなんで講義中寝てんの?」
「別に全部寝てる訳じゃない。聴かなくていいのだけ」
「ふっまじめー」
「じゃああなたはどうなの」
あれ、するりと言葉が出てきた。今まではこんなちゃらい男と話さなかったのに。
「俺はー…そこまで真面目に受けてねーけど」
「ほら」
言える筋合いがないと冷たい視線を送った。
そのまま、お茶とコーヒーを運んできたウェイターを見るときに睨んでしまう。申し訳ない。
……数分後、女子にしては比較的速くご飯を食べ終わる私がフォークを置いた頃、目の前の男もコーヒーを飲み干した。
彼は見にまとっている黒だらけの服とは対照的な白いカップを、音もなくソーサーに置いて口を開く。
「なー、桐島どこ住んでんの。俺駅まで行く」
唐突な質問に白目を向きそうになった。なに言ってるんだこの男、普通出会ったその日に人の家を知ろうとするか。
「馬鹿」
「は?え、なんで。方向同じなら一緒帰ろうとしただけだろ」
「下心は」
「んなもんねーし。ナンパじゃねーかそれ。俺友達いねーの、一緒帰ってくれてもいいじゃん」
