二人は映画を見終わった後、映画館から出る。
竹「本当にこういう映画でよかった?」
  優衣は首を傾げる。
竹「や、なんか女の子ってラブストーリーとかが好きなイメージだから。」
  優衣は歩きながら携帯を打って話す。
優(小説でも恋愛系あんま見ないよ。)
竹「そうか、ちょっと意外。」
優(この映画よかった)
竹「うん、最後感動した。」
優(ちょっと泣いてたね)
竹「俺?見てたの!?」
優(うそ)
  竹下はほっとする。
竹「そうだよ。泣いてないよ。」
優(でもちょっとうるうるしてた)
竹「見てたんじゃん!」
  二人はくすくすと笑いあう。
竹「左手はもう痛まない?」
優(平気 もう普通に仕事もできる。)
竹「よかった、気にしてたみたいだから。」
優(怖かった、使えなかったら生きる道が無いから)
竹「生きる道ってそんな大げさな。まぁ手は大事だけど命を取られた訳じゃないんだから。」
優(でも働けないと生きていけない)
竹「そうだね、けどそういう人たくさん居るよ。大丈夫、そんな死なないから。」
  優衣は少し考え込むように下を向く・
優(今回の件で思った もしもの時の為に臓器提供の登録しとこうかなって どこにいけばいいか知ってる?)
  竹下は少し傷ついた様に俯く。
竹「…あれはどっかに書いておくだけでよかったんじゃないかな。今はインターネットからもできるみたいだよ。」
優(してみる)
  竹下は少しの間黙り込む。優衣も急に黙り込む竹下に戸惑う。そのまま歩いて優衣の家の通りの公園に差し掛かった所で竹下は優衣に向  き直る。
竹「あの、俺と付き合ってくれませんか?」
  優衣は驚いて呆然とする。
竹「いや、こんな今日言うつもりじゃ全然なかったんだけど何か今急に居なくなったらどうしようって。」
  竹下は優衣を見つめる。
竹「あなたが好きなんです。」
  優衣は信じられないといった様子で戸惑う。
  そしてハッと気付いたように携帯を打っって俯いている竹下の前に翳す。優(私のどこが好き?)
竹「好きな所?」
  優衣はうなずいてまた携帯を打つ。
優(十以上言える?)
竹「えっと、誰に対しても親切な所とか、可愛いし…」
優(ノーカウント)
竹「えっ!何で?」
優(私より奇麗な人はごまんといる。)
竹「…そうかな?」
  竹下は困り果ててしまう。
優(私も十は言えない)
  優衣はさらに文字を打ち込む。
優(だからゆっくりでいいなら)
  竹下は一瞬を見て横を向くと、また確認
  する様に画面を見つめて、静かに大きく
  息を吐く。そして優衣の両手を取って額
  をくっつける。
竹「よかった。」
  
優衣は竹下と別れてから、落ち着かずに部屋の中をぐるぐると歩き回る。時折自分の携帯を開けては閉めたり、自分の髪を引っ張ってみたりした後、自分の胸に手を当てて目を閉じる。