彼女の献身的な看病のお陰で、俺の体調は、ほぼ平常に戻った。

勤務先で皆に移したらいけないので、まだ仕事には行かないが、電話やメールでやり取りしたりして、業務にほぼ差し障りの無いようにしていた。

毎食栄養のあるものを届けてくれるので、インフルエンザにかかる前よりも健康的な食生活だった。

彼女が、いたせりつくせり、してくれる生活が心地良すぎる。

もう、秋川さんのいない生活には戻れそうも無かった。


「篠原さん、明日から仕事行きますか?」

「はい。いつまでも休んでられませんしね。」

「治って良かったですね。
明日、お弁当作りますから、持って行って下さいね。
仕事、無理しないでとは言えませんから、せめて、栄養のあるものを食べて下さい。」

「秋川さんにはすっかり、お世話になってしまって。
感謝してます。
独りだったら今頃、干からびて悪化してたかもしれないですね。
今度、改めてお礼させて下さい。」

「私が勝手に押し掛けてしまって、かえって御迷惑だったんじゃないですか。」

「迷惑だなんて、とんでもない!毎日会えて、夢のような日々でした!!」

「そう言って下さると嬉しいですけど。」

頬を赤らめてはにかむ彼女が愛しかった。
毎日顔の大部分を覆っていたマスクが今日はなかったので、久々に表情が良く分かった。

小柄で愛らしいのに、何でもこなしてしまいそうな、しっかり者の彼女。

料理上手で、頑張屋で、さりげなく気が利いて。

こんな彼女が家族になってくれたら良いのにな、なんて願望を持ってしまったりして。

ああ、もう、俺は彼女にメロメロの首ったけだ!

これはもう、交際なんてすっとばして、結婚を申し込んでしまうレベルではないだろうか。

シチュエーションが大事だから、今すぐには申し込みはしないけど。

とりあえず、仕事を一段落させ、その後、デートに誘おう。