「ご免なさい、起きてもらえますか?」

柔らかい声に意識が覚醒する。

マスクをした秋川さんが覗き込んでいた。


「着替えて欲しいんですけど、自分で用意できますか?下着も全部です。」

「はい………」

引き出しを開け、取り出す。

着替え………。洗面所でするかな。
汚れ物を洗濯機に放り込み、居間に戻ると醤油だしの良い香りが漂ってきた。

「鍋焼きうどんです。これ食べて、又、眠って下さいね。水分補給忘れずにして下さいね。

じゃ、又、夜に来ますから。
鍵、まだ借りておきますね。」

そう言うと、パタパタと行ってしまった。

昼休みだから忙しいんだろうな。
いつもよりも広く感じる部屋でうどんを食べ終える。

又、寝るかとベッドに行けば、見慣れないシーツがかけられていた。

これは、彼女の家のシーツだろうな。
いつの間にか替えてくれてたのだ。

そう言えば、帰る時、大荷物を抱えていた。
自宅で洗濯してくれるつもりだろうか。

ハッ、と思い当たり、洗濯機の中を覗く。

さっき脱いだ汚れ物が無くなっていた。

それ処か、昨夜までに溜め込んでいた汚れ物も無くなっており、代わりに洗濯されてキレイに畳まれたシャツやズボン類が棚に置かれていた。


いつの間にか洗濯してくれていたのだ。

そっと顔を近づけると家にあるのとは違う洗剤の香りが漂う。
彼女の香りだった。

熱が上がりそうな予感を抱えつつベッドに潜り込む。

当然、こちらも彼女の香りだった。


ため息を吐きながら、悩ましい思いで夢の中に旅立った。