「はい………。え?秋川さん?」

かすれた声で話し、目を丸くしている。

「あ、こんばんは。起こしてしまいましたか?

飲物とかいるかなと思って、差し入れにきました。

何か食べました?

薬はあります?

熱は?

病院は?」


「あ、えっと………。有り難うございます。」

「熱ありそうですね。測りました?」

「………。いえ。」

「体温計無いんですね。私、持ってきました。

とりあえず、お邪魔させて下さい。
中で話しましょう。

お邪魔します。」


戸惑っている彼を差し置いて、さっさと中に上がり込んでしまった。


私の部屋とほぼ同じ造りだったが、置いている家具で雰囲気がまったく違う。

彼をソファーに座らせると体温計を渡し、脇の下にはさませる。

ちょっと失礼しますね、と言っておでこと首の後ろに手を当てた。

かなり熱く感じられる。

飲んで下さいと、スポーツドリンクのキャップをはずし、手渡した。


喉が渇いていたのか、半分程が一気に消えてしまう。


体温計の音が鳴って、取り出して見ると、39度もあった。

「寒気はありますか?」

そう良いながら彼の掌に触る。
まだ、冷たい。
汗もかいてない。

「少し………」

「いつから辛くなりました?」

「昨夜急にかな」

「病院は?薬、飲みました?」

「行ってない、飲んでない。」

「………インフルエンザかもしれないから、病院行きましょう!保険証はどこですか?」

「財布に入っていた筈………」

「車の鍵取ってきますから、行ける準備して待ってて下さい。」

そう言い、慌てて自分の部屋に戻り、時間外になるので病院に電話をかけ、車の鍵を持って迎えに行く。

彼は、玄関の外でドアにもたれかかる様にして立って待っていた。

随分と辛そうだったが、何とか歩かせ、病院に行ってくる。

診断はやはり、インフルエンザだった。