今日の惣菜ノルマは大体こなしたし、そろそろ昼休憩入ろうかな、と辺りを見渡す。

「あ……。」

店舗の中に篠原さんの後ろ姿が見えた。

昨日は楽しかったな、と思う。
誰かと食事するのがこんなに楽しい事だなんて、一人時間が長すぎて忘れていた。

実家に帰れば父母や兄夫婦、甥姪もいてにぎやかだけど。

でも、もう実家はたまに帰るってだけの家で、私のずっと住み続ける家ではなくなっている。

私の知らない家具が増えていたり、子供の頃から使っていた物が古くなって処分されていたり。

仕方の無い事だけど、どんどん、知らない空間になりつつある。

その分、私は今の部屋に馴染んで、この町が住み心地良くなっていて。

寂しいけど、私の居場所はここなんだな、と思う。

寂しいなんて思っていなかったけど、篠原さんとの時間が楽しくて、寂しさを実感してしまって。

ああ、又一緒にいたいな、なんて思って。

そう思ったら、足が勝手に駐車場に向かってた。

もう、いないかも知れないのに。