俺はシャワーを浴びてから、堅苦しくない格好に着替えて秋川さんの部屋へと行った。

30分と伝えていたので、彼女の支度を考えて40分程してから行った。

もちろん、行く前には予告の電話をした。

持っていったシャンパンを渡すと、グラスが無いと苦笑したので、二人三脚の景品のマグカップで飲もうと提案する。

お洒落な雰囲気なんか求めてない。
彼女の部屋で、ペアのマグカップを一緒に使うと言う事に価値があると思うのだ。

「シャンパンって、度数何%あるのかな?」

彼女がビンを眺める。

「え?11%?ビールって半分以下位ですよね?うわ、私酔い過ぎるかも………。」

俺は携帯電話でシャンパンを検索してみる。

「確かに、酔い易いみたいだね。よく冷すと美味しいみたいだし。今日は止めておく?」

「そうですね。この次用に冷やしておきますか。缶チューハイありますけど飲みます?」

「一つもらおうかな。うちには、缶ビールがあるから後で持ってくるかな。」

「取りあえず、つまみ出しますね。」

そう言うと、テーブルに並べ出した。
きんぴらごぼう、ヒジキの煮物、ほうれん草のごまあえ、具沢山の冷やっこ、カマンベールチーズとクラッカー。

「え、こんなに沢山!全部手作りだろう?」

「昨夜作り置きした、簡単なものばかりですけどね。
おばあちゃんの食事みたいで恥ずかしいんですけど。
あ、このカマンベールは横に切ってレンジでチンしただけで、クラッカーにつけると、チーズフォンデュみたいなんですよ。
冷めないうちにどうぞ。」

「俺、コンビニか外食だから感動した!すごいよ!」

「ご飯が食べたくなったら、オムライス出しますから言って下さいね。」

彼女もシャワーを浴びて着替えていたようだから、ほとんど作る時間はなかっただろう。
作り置きにしても、ハパッとここまで揃えて出てきた事に感激した。

食べてみると、どれも飽きのこない味で美味しい。
コンビニ弁当とは違うのだと実感した。

急に、飲むより食べたくなる。
オムライス、どんなのかな?

「オムライス、作りますね。テレビでも見てて下さい。」

俺の視線を感じたのか、何も言わないのにニッコリ笑ってキッチンに立った。