チュンチュン
「ん…。」
小鳥のさえずりに起こされた私は、ゆっくり目を開けた。
広がった白い天井が、その日は黒かった。そしてすぐにそれが天井ではないことが分かった。
昨日はリビングで寝たんだっけ…。
テーブルの脚に、おでこをぶつけてしまわないよう起き上がった。
布団なしで寝たはずなのに、毛布がかけられているってことは直人がしてくれたに違いない。毛布を背中にかけたまま、カーテンを開けた。
ピシャっと光が差し込んでくるかと思いきや、どうやら今日は雲が多いようで電線にとまっている小鳥もどこか寂しげだった。
ガチャ
「ふ~。あ、倫子。おはよう。」
上半身裸の彼。朝風呂したときは決まってそう。
「おはよう。服着てね。風邪ひくよ。」
一度振り返って、なるべく彼の体を見ないで私は答えた。
「倫子こそだよ。
ごめんね、俺が昨日ベッド占領してたからそこで寝かせちゃうハメになって...。」
「ううん、大丈夫。」
彼がベッドを占領していたから、確かにここで寝たのだけど、でもそうじゃない。
占領してもいなくても、私はきっと彼の隣で寝なかった。
「倫子寒そうに丸まってたよ。」
直人はコーヒーを作って、私に差し出してくれる。
「ありがとう。」
あつあつのコーヒー。白い湯気が一本の柱を作り、冷たい空気に広がっていく。猫舌な私は、ふうふうと息をふきかけて一口含んだ。
彼は黒のTシャツに袖を通すと、私の横に座る。
「今日、どっか行かない?俺、買いたいものあるんだけど。」
「んー、ちょっと寒気するからやめとこうかな。
洗濯ものも溜まってるし…。買い物、今度じゃだめ? 」
「いいよ。じゃあ俺が洗濯物片すよ。倫子寝てな。」
彼は私の頭をくしゃくしゃっとかき回すと、お風呂場に向かった。
私は彼がいる方を向いて横になる。