「お疲れさまです。」
 彼と仕事終わりに外でご飯を食べていた時に、その電話はかかってきた。 

「……その件に関しましては、担当の谷口にお任せしているのですが…。

はい、はい。
じゃあ明日の午後の打ち合わせ時に、詳しく改めて説明します。

お電話わざわざすみません、先輩。
はい。失礼いたします。」
 プ。携帯をかばんにしまう。

「誰から?渡辺さん?」
 彼は口に焼き鳥を運ぶ。

「うん、ごめんね、ご飯中に。」

「いや、いいよ。居酒屋にしなくてよかったね。」

「そうだね。」
 私は微笑む。


4人席の個室。
私達はグレーのソファに向かい合わせで座りながら、頼んだ焼き鳥やら、サラダやらお肉やらを食べている。

メニューも価格も手頃なものなのに、雰囲気は落ち着いていて、ゆっくり食事をとることができる。初めて来たのだけれど、また来ようと彼と話していたところだった。

「また渡辺さんと仕事してんだね。」

「うん。」
 直人と一緒に仕事をしたとき、渡辺先輩とも同時進行にお仕事をさせていただいていた。

「覚えてたんだ、渡辺先輩とちょっとしか話したことないのに。」

「もちろん。ライバルはちゃんと見張っとかないと。

渡辺さん、かっこいいし。」
 ハハハと彼が笑う。

そういえば、彼と知り合ったばかりの時に、

「渡辺さんと付き合ってるんですか?」
 そう聞いてきたことがあったっけ―――。

あの時は特に何も思わなかったけど、こうしてみると、彼はあの時から私の事思ってくれていたのかな。

「まあ渡辺先輩、人気あるけど……ライバル扱いしてたんだ。」
 クスクス笑う。