「ご飯、今日もおいしかったよ。」

「ありがとう。」
 その後ご飯を食べ終わった私たちは、ベランダの淵に座って星を眺めていた。

「…雲、はれたね。」

「天の川どこかな。」
 夜空を見上げながら、そんな風におしゃべりする。

「彦星様と織姫様、会えてるかな。」
 彼の肩に寄りかかり頭をあずけた。

「……会えてるよ。」

「雨降ってたのに?」

「会えてうれしくて泣いてたんじゃない?」

「そっかあ…。」
 彼がくすっと笑いをこぼす。

「……誰かさんも会ったとき泣いたっけ?」

「もう!」
 ハハハっと笑う彼。私はすねて彼から少し離れた。

「……でも、本当今俺幸せだよ。」

「何がー?」
 また冗談を言うのだろうと思い、私は天の川を探すことに集中する。

「こうやって、倫子の顔見れて。
一緒にご飯食べれて。今、天の川一緒に眺めれてることも。

……全部。」


「どうしたの?直人がそんなこと言うなんて…。」
 私が彼に日頃の思いを告げると、彼は確かにそれに応えてくれる。でも、彼からまずこうやって切り出すことは、めったにない。

それだけに、本当に彼が言ったのかと耳を疑ってしまう。

「…やばい、はずかし。言うんじゃなかった。」
 今度は彼が私から離れる。

「直人?照れてるの?」

「照れてない。」
 そっぽを向く彼。

「耳真っ赤だよ?」
 近づく私。

「うるさい。」
 また離れる彼。

「直人?」

「うるさいってばー!」
 ますます真っ赤になる彼の耳。

そんな彼に私は近づいて、横から抱きしめる。

「……私も幸せ。」

「……ばか。」
 空の上で一年ぶりに、愛をささやきあう彦星様と織姫様―――。
どうかいつかは彼らも、私達の様に毎日会えるようになりますように。

そう思いながら、
月明かりに照らされて映し出された私たちの影は、ゆっくり重なり合った。