ピンポーン
今度は玄関のチャイム。
「わ、ごめん、今度は私だ。
誰か来ちゃった。」
「今度は倫子か…。」
苦笑する直人。
「この間ネットで注文したやつかな~、
一旦切るね。ごめんね。」
私は彼が返事したのを聞き終えて、通話を切り玄関へ向かった。
「はーい。」
バタバタと来客者に今出ますと分かるように、わざと音を立てる。
ガチャ
「お届け物です。」
そう言ってきた配達員らしき人はスーツ姿で、青色の帽子を深くかぶっていた。
……スーツ?
と違和感に感じながらも、
両手で受け取れるほどの小さな小包を確かに私に差し出しているから、この間のが届いたのだと確信する。
「ご苦労様です。サインでいいですか?」
私は靴箱の上にいつもおいているペンを手に取る。
「いえ。サインは大丈夫です。」
「あ、印鑑ですか?」
ペンをシャチハタに変える。
「いえ、印鑑も大丈夫です。」
「…えっと?」
きょとんとしてしまう私に、配達員さんがくすっと笑う。
「サインも何もいりません。でも―――」
被っている帽子に彼は手をかける。
私は両手を口元に持っていく。
隠した口元は当然あんぐり……。
「倫子さんもらえますか?」
そう言われて、突っ立ったまま。
思考をぐるぐるとあーでもないこーでもないと巡らしながら。
配達員さんは玄関に入り、バタンと扉を閉める。
「また正式にこちらへ勤務となりました。
神沢 直人です。」
それは、
今までも
そしてきっとこれからも
彼がする一番意地悪な表情に違いなかった。