「直人と過ごせるのもあと3日かあ…。」
 朝ごはんを食べ終わり、片付け終わった私はテレビを見ていた彼の横に座った。

「今日休みもらえたのでも、ラッキーだからなあ。」
 彼の眉が少しさがる。

彼はこっちにあくまで出張中。1週間ちょっとあった出張期間も、あと3日で終わりを告げようとしている。楽しい時間はあっという間って昔からいうけれど、このことなんだろうな。

「そうだよね…」
 私は彼の手を握った。

彼もぎゅっと握り返して、

「おいで。」
 そう言って、肩にもたれかかるよう私を誘導した。触れたところから直接、彼のぬくもりが伝わってくる。

「倫子とまたこうしていれるなんて、奇跡だな。」
 苦笑する彼。

「そうだよね。
あのスニーカーがなかったら、私達たぶんあのままさよならしてた。」

「スニーカーってところが、なんか倫子らしいけどね。」
 ハハハっと笑う彼に、私もつられて笑った。

「前のスニーカーも、相変わらず使ってるから。
ずっと使いたいからさ、大事な日だけ履くようにしてんだ、今は。」

「え?そうなの!」
 驚いて私は彼から離れ、目をあわせる。

「靴紐結んでるときちゃんと説明してたんだけど、倫子ちゃんは聞いてなかったみたいだからねー。」
 コツンと人差し指で私のおでこを突いた。

「……だって。」
 口をとがらせた私の頭を、直人がくしゃくしゃっと撫でる。

「本当ありがとう、倫子。
でもさ、まだ遠距離続くしさ、話そうもうちょっと。
結局あの後、倫子泣き疲れてすぐ寝ちゃったじゃん?」

「うん。」
 私はゆっくり、まだ彼に話し残していたことを告げ始めた。

嫌だったこと、切なかったこと、寂しかったこと。
これからのこと。

向こうに帰っても、お互い愛情表現はちゃんとすることとか、連絡は毎日じゃなくてもいいけど、なるべく努力することとか。

彼はうんうん、と優しくうなずいて、何の反論もなしにただ聞いて、ごめんねと何度も謝ってくれて。話すたびに、私の中の絡み合った糸がほつれていく感覚がした。