ばかって言う君が好き。


「あっ。」

「じゃぁ、もうしない。」
 彼の意地悪な表情。

私は知ってる。
彼がどんな時にこんな表情をするのか。
何度もこの表情を見てきた。

そして、その表情をされたら、私はどう反応するか彼もきっと知っていて。


「…………やめないで。」


「…ん?」

「やめないで。」
 私は彼の腕に飛び込んだ。

「……よくできました。」
 彼はハハハっと笑いながら、私の頭を優しく何度もなんども撫でる。

「直人のばか。ばか。ばか。」
 私はまた涙を流しながら、でもそれはうれしい方のそれで。

「ごめん、ごめん。
倫子可愛くって、すごいいじめたくなっちゃってさ。」
 彼は冗談まじりにハハハっと笑う。

「ばか。」
 彼の腕から離れて、またキス。

話したいことはたくさんあった。
嫌だったこと、不安に思っていたこと、あの日の電話は強がりだったこと。

だけど、


「……ずっと会いたかった。」


「……私も。」


もう言葉なんていらない。
こうして私たち、お互いの熱を感じれたら……

きっと全部分かった気がするから。