大晦日、私は今年も実家で過ごしていた。父と母は夕飯を買いに出掛けているらしく、姉とリビングでテレビを見ていた。

「お姉ちゃん、結婚式の準備進んでる?」

「まあまあね。
あ、直人くんこれなくなったんだねー、残念。」

「うん、そうなの、仕事忙しいみたいで。」
 私は机に置いていた携帯をちらっと見た。

実家ってそんなに忙しい?
実家に帰ると昨日のお昼に連絡をくれて以来返事がない彼に、私は疑問を抱いていた。

「……うまくいってるの?」
 テレビから視線を外し、姉は机についていた頬ずえをといた。

「いやー、もう5ヶ月会ってないし、電話もしてないんだよね。
連絡も毎日とれてないし。」 
 ハハハと私は笑う。

「好きっていってる?直人君も倫子の気持ち分からないのかもしれないよ?
ちゃんと一度話そうって言ってみなよ、勇気ださなきゃこのままだよ。」
 姉はくしゃっと笑った。私を安心させるためだとすぐにわかった。

ありがとうと返事しながら、私は携帯をもう一度ちらっと見た。
連絡はやっぱり来ていなかった。


 姉が母と夕飯を作ってくれている間、 私は自分の部屋に戻って、床に敷いた布団に転がっていた。彼との連絡の履歴をぼーっと見返していた。

「本当、好きなんて単語一個もでてこないや…。」
 並んでいるのは「忙しい」と返事をくれる彼に、私が労わる言葉ばかり。たまに出てくる会話といえるやり取りも、他愛もない話で終わっていた。

確かに彼と冗談話をしているときは楽しいのだけれど、私が彼としたいのは、そんな会話じゃない。

次いつ会えるとか、会えなくても電話とか、そういうさ、そういう―――


「勇気か…。」
 姉の言葉を思い出して、このままじゃだめだよね。

そう思って、私は意を決して電話をかける。


プルプルプルプル――――久しぶりに聞いたコール音。


出て…お願い…出て――――