「今年は一緒に祝おうって言ってたのにね……。」

「うーん、まあしょうがないよ。」
 私の絞り出すような声とは反対に、彼の声にはまだ余裕があるみたいだった。

 今日も彼と寝る前にテレビ電話をしている。だって今日は彼の誕生日だから。

「そりゃそうだけど――。」
 彼があまり気にしていないのは確かに助かる。

でもやっぱり、大好きな人の誕生日は直接祝いたいわけで……。

「ほら、笑って。倫子は笑顔の方が似合うよ。」
 浮かない顔の私を励ます彼。

「……そうだね。」
 彼の為に笑わなきゃと、私は笑った。


「次会った時で、本当にいいの?プレゼント。」

「あーうん、いいよいいよ!送るのも大変だから。」

「そっか。」
 ベッドに三角座りしていた私は、薄い黄緑色の花模様の掛け布団で顔を少し隠した。

「あ、また倫子顔隠すー!」

「だって、恥ずかしいじゃん!」
 布団をもっとかけて、顔を隠す私。
目から下は布団で隠れて、私の目しか見えない。

「はあ~?じゃぁ俺も隠すよ、顔。」
 そう言って、彼はまだ布団の上ではなく、
パソコンラックの椅子に腰かけていたので、手で顔を隠す。

「もう!直人は別に隠さなくていいから。」

「だったら、倫子も顔隠さないで。」 
 笑いながらそんなやりとり。


「もう結構テレビ電話してるのにね。
やっぱり恥ずかしくて顔隠しちゃうや」
 私は布団をさげる。

「倫子はいつも隠すからなあ、

……すっぴん可愛いのに。」
 意地悪な彼の表情。

「ばか。」
 そういいながらも、少し喜んでしまう私。

そんな私を彼は笑って、かけていたメガネを外した。
彼も布団に入るらしい。