ドキドキ

ドキドキ

駅の改札口。
電源をつけて、落として、つけて、落として。

そんなに時間たっていないのに、じっと待っていられなくて。

改札からスーツを着た人、ちらほら学生、もちろん私服の人、ぞろぞろとたくさんの人が出てくる。


直人もこのラッシュにいるかな……。

そう思って出てくる人の中から彼を探すも見つからない。


「倫子。」
 後ろから私を呼ぶ声。

「え?」
 振り返ると……

「ばかだなぁ、俺とっくに改札抜けたのに、倫子どこ見てたの?」
 苦笑しながら私をからかう―――彼。

「改札見てたよ!」
 私は彼のそばに駆け寄る。

彼は笑って。

「ただいま。」
 人目もはばからず私を優しく抱きしめた。

「え、ちょっと、直人…。」
 普段ならこんなことするような人じゃないのに、直人も寂しいって思ってくれてたんだ…

そう実感して私も彼を抱きしめ返そうとする、


と、
彼の耳打ち。

「…携帯で時間確認してる姿、かわいかったよ。
ほら、とりあえず倫子の家に帰ろう。」
 先に歩いていく彼。
肩は小刻みに揺れている。

「……もう!」
 私は彼を追いかけた。