ばかって言う君が好き。


 6月も後半を迎えていた。
その日の寝る前、私達は初めてテレビ電話をした。

「ねえ、テレビ電話したい!」
 きっかけは私のおねだり。
最初は自分の顔をみられたくないとくすぶっていた彼も、最後には優しくいいよと返事してくれた。


『では、始めます!』

『ばっちこい!』
 そう事前に文字でまずやり取りして、テレビ電話を繋げる。

コール音が鳴る。
その数秒が、私の心臓をせわしくさせる。

切り替わる画面。
映し出された彼の顔。

数ヵ月ぶりの、愛しいあなたの表情。


「お疲れさま。」
 興奮とドキドキが伝わらないよう、私は一音一音大切に発した。

「お疲れ。」
  電話のときと同じ、彼の声。

でも彼の目線は、画面の外へとせわしなく移動している。

けど私もそれは同じ。
見たいのだけれど本当に恥ずかしくて、いたたまれない、みたいな……。

「これ恥ずかしいね。」
 たまらなくなった声で、彼はそう言った。

「だね。」
 口元を手で隠しながら私は返事した。

毎日彼の写真を見ていた。
だから久しぶりでも大丈夫だと思っていた。

でもだめだった。
“今”の彼を見るのと、思い出の中の彼を見るのは違う。

私の手は口元から動こうとしない。