「ありがとう話してくれて。
お前は優しいから、そうやってすぐため込んで。俺に何も話さないんだから。」
「でもそういう恋愛してきたから、言えなくなっちゃったんだね。自分が我慢すればいいやって思うようになっちゃたんだね。
分かってあげれてなくてごめんな。」
「……っ」
彼の言葉の一つ一つが、私の中の何かを溶かしていく。
「俺が仕事で忙しいときも優しい言葉かけてくれるばっかで、寂しいって言わないんだもん。
言っていんだよ、辛いって会いたいって甘えていんだよ。俺嫌いにならないから。」
「……なるよ。
そんな私、直人は嫌いになっちゃうよ。」
「ならない。」
直人は私の体を離して、私の目を見てきっぱりと答えた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔。
我慢しようと思っても、止まらない涙。
「泣いていいから。涙まで我慢しなくていいから。」
ポンポンと頭をなでてくれる直人の手は、いつも温かい。
「嫌なことも直してほしいことも言っていいから。
俺に話すことで倫子の気持ちが軽くなるなら、俺はすごくうれしいよ。」
「俺の悩みになってしまうぐらいなら、
自分の中に押しとどめておこう とか考えなくていいから。」
「あっ。」
言われてしまった。
私が一番欲しかった言葉。
誰も言ってくれる人はいないだろうと思っていた。
友達にも彼にも親にも、だんだん話せなくなっていった私。
私が嫌だったことを話すことで、相手が傷ついてしまうならもう私の中に隠そうと、いつのまにか誰にも本音で話せなくなっていた。
「直人、なおと、………なおと。」
彼の体に頭をうずめる。
「倫子、大好きだよ。全部。大好き。」
ふってくる彼の愛の数々。
ああ、この人は本当に……本当に。
「ばか。」
頭をあげた私。泣いた顔で笑う私を見て、彼も笑い返す。
「俺は目を真っ赤にしてお岩さんみたいに目をはらした倫子も好きだけど、倫子は?」
彼のいつものからかいの言葉。
……もうこの人は。
「嫌いかな~。」
私はそっぽを向く。
「はあ?」
おいおいそりゃないぜと言いたげな彼。
そんな彼を見て私は笑う。
それでもまだ残念そうな彼。
「しょうがないなぁ~。」
私は彼に顔を近づける。
愛しいあなたへ
言葉で表せないこの気持ちを唇の熱にこめて、私は何度も何度もその日愛を送った。


