「俺は……倫子とずっと付き合ってたいって思ってる。

だから、

遠距離でとりあえずは頑張ってみないかな……。」
 ぎゅっと手に力をこめる彼。

彼の目を見つめる。
真剣な彼の瞳。

この人なら、この人なら、大丈夫かもしれない。
遠距離でも大丈夫かもしれない。

「そう言ってくれてうれしいよ。」
 彼の手をぎゅっと握り返す。

すっごくすっごく好き、大好き。
直人のことが大好き。


「ごめんなさい。」
 でもだめなの。

「私は遠距離恋愛は無理です。」
 目から出てくる大粒の涙。

何度何度ふいてもふいてもとまらない涙。

「倫子……。」
 抱き寄せようとしてくる彼。

「ごめんなさい。」  
 私はそれを拒んだ。


「ほかの子なら、大丈夫だよっていうと思う。
でも私はもう無理なの。
私、わたし。」
 泣いてばかりの私に、今日話し合うことは無理だと気づいた彼は私の頭をポンポンと撫でる。


「移動、4月の後半なんだ。
もうちょっと考えてみてくれないかな…。」

「……。」

「今日はとりあえず帰るな。
また連絡するよ。」


ガチャン。

玄関のドアが閉まると同時に、クワズイモの葉から雫がぴちゃんと床に落ちた。