ピンポーン

『ごめん、倫子。
今日夜会える?』

そのメッセージは会社でお昼ご飯を取っていたときに彼から来た。

13時。
彼からこの時間に連絡来ることはめったにないから、珍しいなぁと思いつつもすぐに返事を返す。

『うん、大丈夫だよ?どうかした?』
 すぐに既読がつく。

『いや、クワズイモ枯らしてないか見に行かなきゃと思ってw』

『直人に貰ったバレンタインのお返しなので、大切に育てていますからご安心なく!』
 私はおにぎりをほおばりながら、くすっと笑いをこぼす。

『たぶん今日は俺の方が早く上がるから、玄関前で待っとくな。』

『うん。』と送ろうとして、
私はすぐに打ったその3文字を消した。


『合鍵の出番じゃないですか?』

すぐに既読。


『……ほんとだw』


 私はズボンのポケットに入れていたキーケースを取り出し、彼と交換したお互いの部屋の鍵を見つめて若干にやにやしつつ、またそれをしまった。


19時27分。
直人待ってるかな。

駆け足で私は家に帰っていた。


ビールあとちょっとだったし、買って帰ろうかな。

目先に見えるコンビニを見つめながらそう考え、いや、早く会いたいし今日はそのまま帰ろうとまた足を急がせる。


ガチャガチャ
玄関のドアを開けた。

「おかえり。」
 いつもならいないはずの彼、ネクタイを少し緩めた、スーツ姿の彼。

「ただいま…。」
 私は靴も脱がないで、直人にそのまま抱き付いた。


「え!?ちょっ。」
 彼は驚きのあまり、支えていた玄関のドアを慌てて離してしまったみたいで、いつもより大きくガチャンと音を立て玄関がしまった。

「あーあー、お隣さんがうるさいって言ってるよ?倫子。」
 そういいながら、抱きしめ返してくれる彼。

「ごめんなさい。」
 くすくす笑う私達。

「ほら、俺はまだどこにも行かないから靴脱いで、あがっておいで。
ご飯作ったから。」
 彼はポンポンと頭をなでてくれると体を離した。