「うん、うまく焼けてる。よかった。」
直人も私もぺろっとケーキを食べてしまう。
「倫子……」
直人がフォークをお皿に置く。
「ん?」
ちょっと真剣な顔の直人に、私も向かい合わせになって、フォークを置く。
「……これ、誕生日プレゼント。」
「え!?」
彼から手渡されたそれは、両手で抱えるほどの大きさの赤い袋に入った、プレゼントだった。
「17日誕生日だよね?
当日会えるかわかんないからさ、今渡そうと思って……。」
「あ、あけていい!?」
コクコクとうなずく彼。
結ばれていた白いリボンをとくと、桃色のマフラーが出てきた。
「わあ!ありがとう!!!
すっごく嬉しい!」
私はマフラーをさっそく首にまわしてみる。
「似合ってる!?」
「うん、似合ってる、可愛い。」
照れくさそうに笑う直人。
「え、でも誕生日教えてなかったのに……」
「LINEのID、0217って入ってるから、誕生日かなあ~って鎌かけちゃった。」
「ありがとう……
直人の誕生日、夜ご飯一緒に食べただけで、何も私しなかったのにごめんね。」
直人の誕生日は夏。
水族館へ出かけた数週間後、付き合うことになった私たち。
誕生日を彼に尋ねるほどの仲になった頃、既に誕生日の数日前になってしまっていたのだ。
「いいよ、いいよ。倫子が仕事で忙しい時期でもあったし。
男はあんま誕生日とか気にしないしね。ご飯でも十分嬉しかったよ、俺。」
「でも……」
私はプレゼントしてくれたマフラーを外して、丁寧にたたむ。
「……じゃぁ今年の夏は期待してますね。」
「ん?」
私は顔をあげて、首をかしげた。
「今年の誕生日は一日中、一緒に過ごしてください」
彼は笑って、私の頭をわしわしと撫でる。
彼がくれたプレゼント、桃色のマフラー。
それだけじゃなくって、今年も彼と一緒なんだーって安心もプレゼントしてくれたようだった。