「コーヒーどうぞ。」
「ありがとう。」
買い物袋の中から、缶に入ったコーヒーを取り出し彼に渡した。すぐに冷蔵庫にいれる必要のあるものだけをしまい、壁際に置いたソファに二人して腰かける。
「疲れた?」
「ううん、大丈夫。」
一気に飲み干してしまった缶を、私は足元にコトンと置いて彼の肩にそのまま寄りかかる。
「やっぱり疲れたんじゃないの?」
「大丈夫だよ。」
と肩をふるわせた。
「最近、バタバタだもんね。
結構すること多くてびっくりした。」
「私も。」
テーブルの上に置かれた雑誌の束をちらりと見た。白い教会の前、幸せそうなカップルが笑ってうつっている。
「早く、倫子の姿見たいなあ。もうちょっと先だもんなあ。」
直人はキャップを閉めて、缶をソファの片隅にぽすっと置いた。
「直人もかっこいいだろうな。すっごく楽しみ。」
口元を緩めて、私はそのまま肩に寄りかかるのをやめて、彼のひざの上に乗っかった。
「眠くなったの?」
「うーん。ちょっとだけね。」
目にかかった髪を彼は優しくどかした。
「ありがとう。」
「いいえー。」
ちょんと私の鼻先に彼が触れる。
長いような短いような沈黙。
彼はふと思い出したかのように口を開いた。


