はぁ。
手をこすりながら息を吐く。もわもわっと出た白い息。

20時16分、仕事帰りのいつもの道。
すぐ横を電車が抜けていく、街灯ちょっぴりのあの道。でもそれが私の毎日。


鞄から取り出した携帯の電源を押す。
通知0件。

ついさっき送ったばっかりだから、彼からの返事はまだくるはずないのに。
きっと確認してしまったのは、今日が24日だから。

クリスマスイブも相変わらずの仕事。
明日のクリスマスも相変わらずの仕事。

本当は明日の夜、彼と会うはずだったのだけれど……


『悪い!夜、先輩から飯誘われちゃって。
いつもよくしてもらってる先輩だから断れないんだ。

本当ごめん!』
 なんて昨日彼からごめんなさいメッセージが届いてしまったから、当然おじゃん。

『気にしないで』って送りながらも、
先輩少し空気を読んでください!って正直思いながら、

しょうがないしょうがない。
そう心で自分に言い聞かせる。

でもやっぱりどこかもやもやした気持ちもあって、いつもより足取りが重い私。通りすがりのカップルを見るたび、重さは増した。


「ただいま~。おかえり~。」
 誰もいない部屋に一人つぶやいて、一人で返事する。

2階建てのアパート。階段を上ってすぐの部屋。塀から見えるのは公園ではなく、いつもの道。

カギと携帯、かばんを置いて、時計を見て。

今日はいつもより帰るの時間かかってるや
なんて思いつつ、冷蔵庫から昨日の夕飯を取り出して、食べる。

もやし炒めとサラダ。

明日直人に会うと思ってダイエットしてたのにな。
口の中でもやしがシャンシャンと音をたてる。

食べるのはそれだけと決めていたのに、やけになってダイエットだからと我慢していたみかんゼリーも食べてしまう。