ちょうど彼が、分厚いスエットから薄手の長袖に部屋着を変えた日だった。

「倫子、再放送やってる!覚えてるこのドラマ?」
 ビールを飲みながらテレビを見ていた彼が、そう声をかけてきた。

「あ、これ!」
 ずぼらな私でさえ一回も見忘れたことがなかったそのドラマは、2年前二人で絶対みると決めていた30分という短編の、あるカップルのお話し。

直人がはまったのが見るきっかけだったけど、毎週絶対二人で見ると決めていた。

「え、最終回じゃん!
早く気づいてたら1話からずっと見てたのに。」
 彼がはぁとため息をこぼす。私も一緒に見ようとタオルでぬれた髪をふきながら、台所にコップを置いて彼の隣にすわった。

「結局これどうなって終わったっけ?」

「倫子忘れたの?」

「いや、なんとなく覚えてるけど、セリフまでは覚えてないから……。」
 直人がおつまみとして食べていた奈良漬を、私はつまんだ。

「あの喧嘩の後、二人で話し合いをして仲直り一度はしたんだけど、女の人が仕事で海外行くことになって、結局1年間距離置くことになったじゃん、覚えてない?」

「あ!」
 彼の言葉で思い出した。

 そうだテレビの中の彼らは、1度大きな喧嘩をしてそのあと仲直りした。
だけど彼女の中のわだかまりは取れなくて、ずっと彼に相談できずにいた、海外にお仕事することを一人で決めたんだった。

「彼は彼女が自分に相談してくれなかったことで、ようやくこのままじゃいけないって、本当の意味で気付くんだよね。

それで、彼も彼女に日本に帰ってくるまでの1年間、距離を置くことを決意した…。

直人あってる?」