「お疲れ、リンリン。今日はゆっくり休めよ。」
「お疲れさまでした、お先失礼します。」
朝してしまったミスを引きずりながら、私は歩いた。
通知0件。彼から連絡は何もない。
今日いつ帰るのか、それすらも知らない。
連絡がないと考えが風船のように膨らんでいくのは、私だけなのだろうか。
考えがマイナスの方にどんどん広がって、そんなはずないところまでたどり着く。
話して分かりあえなかったら、どうすればいんだろう。どうやったら元通りになれるんだろう。
やっぱり我慢するしかないんだろうか。
でもそれって……本当に正解?
ガチャ
「ただいま。」
自分にだけ聞こえる声でそう言った。
リビングの明かりがドアから透けて見えて、彼が帰っていることは分かっていたのに。
「おかえり。」
テーブルの前に座っているかと思いきや、彼はキッチンに立って何かを作っていた。
どうしたの、と訊く前に
「今日早めに終わって暇だったから。」
彼はおたまをかきまぜながらそう言った。ぶっきらぼう、ではなく優しい口調だった。
「そっか。」
寝室に入り鞄を置くと、手短に部屋着に着替えた。
「何か手伝う事ある?」
「箸とコップ出してくれる?」
「分かった。」
煮込んでいるものがくつくついう音だけが部屋に響く。
……何話そう、何話そう。
沈黙はもう嫌だ。
この感じ、嫌だ。


