ばかって言う君が好き。


「玄野さんと、ご飯行ったの…?」

「……1回。でもなんもないから!本当に!」
 彼の瞳はまっすぐだった。嘘をついていないと何となくわかった。
それでも、それでも―――

「じゃあなんで二人で飲むことはないとか言ったの!」

「それは……。」

「先輩が直人が女の人と飲みに行くとこ見たよって教えてくれた時、私どんな気持ちになったかわかる?

惨めだよ…、私本当惨め……。」

「ごめん。」

「封筒は?何あの鞄に入ってたの…あれ見られたくなくて、ご丁寧に漁るなって言ったの?」

「中見た!?」
 彼はそこだけ急に声を荒げた。

「見る勇気なんかないよ……。」

「あ……ごめん。」
 私も彼も黙った。横を車がすーっと一台通り過ぎた。

こんな最中にでも、車からかばってくれる彼のやさしさがまた心苦しかった。

「ケーキ…作ってくれてたんだね。
ラッピングまでして。
美味しかった。すぐ追いかけたからほんと一舐めだけだけど。」

「……うん。」

「封筒は、玄野からのもの。
でも本気で何もない。

中見せたいけど、見せれない。ごめん。」

「……うん。」
 私はそこでまた泣き始めた。

初めて彼に怒って、訴えたらすっきりするかと思ったけど全然そんなことはなかった。

彼も私と同じくらい傷ついた表情をしていた。

私は黙って手をぎゅっと握って、

「帰ろう…。」
 そう言った。

雪がちらちらと、つないだ手の上に落ちた。
直人の手は冷たかった。