「寒い…。」
ポケットに入れていた携帯を取り出した。着信7件。LINEも10件ほど続けてきていた。
名前を見なくても誰からか分かった。
再び画面に着信相手の名前が表示される。
私はしばらく見つめて、黙って携帯をポケットにしまった。
と同時に
「なんで出ないんだよ!」
「なんで……!」
直人がいた、振り返った先に。
はあはあと膝に手をついて息を整えている直人が。
私はまた走り始めた。
「あ、待てって!」
「っ。」
もう走る元気は残っていなかった。すぐにでも立ち止まって座り込んでしまいたかった。
だけど、どんなに遅くても私は走るのをやめなかった。
「倫子、倫子。」
私の名前を呼ばれるたびに、涙が頬をつたう。ツンと後ろに引っ張られる感覚がして、私の足はとまった。
右手が彼につかまれていた。
公園をでてちょっとのところだった。
「どうしたんだよ、どうした?」
息を荒げて必死に理由を問う彼。
「どうしたって何が!」
感情的に私は声を荒げた。掴まれた手も振り払おうとしたのだけれど、彼はそれだけは許さない。
「何怒ってんの?」
「怒ってないよ!」
「怒ってんじゃん!」
二人の呼吸の音だけがはあ、はあと響く。
「……チョコレート何なの?」
さっきより落ち着いて私は問いかけた。
「だから、あれは…」
「会社の人からのものだよね!
毎年もらってる、何の意味もない!」
彼は何も言わなかった。
「知ってるよ、聞かなくたって。
でもさ、でも…そんなくそまじめに毎回毎回正しいこと並べられて、全部言ったらあたしが何も思わないとでも?
あたしの前でパクパク食べて……。」
自分でもめちゃくちゃなことを言っているのは分かっていた。
それでもそう声を荒げて、言わなくちゃ気が済まなかった。


