ばかって言う君が好き。


 乱雑に食べ終わったそれをそのままに、私は手だけ洗い落とした。ケーキを食べ終えても涙は止まらなかった。

ひどい嗚咽。
声を出さまいとしても出てしまった。


ガチャン、扉の音が聞こえる。

食べ終わったケーキのお皿を片付けなくちゃいけない。ゴミ箱に入り損ねたごみを拾わなくちゃいけない。
見つけた手紙も完全に元の様にしなくちゃ…。

涙も止めなくちゃ―――

そう分かっていても、そう分かっていても、
何一つ私はできなかった。


バタン。
お風呂場の扉が閉まる音がした。

「はぁ~さっぱりした。お水……」
 そう言いかけた彼はすぐに言葉を変えた。

「倫子どうしたの!?」
 声を張り上げ、直人は私に駆け寄った。震える私の背中を彼は何度もさすった。

この人の大事なところを蹴ってしまおうか、そう思うぐらい憎くてたまらないのに、

どうしてだろう、
「大丈夫?」そう心配そうに声をかけてくれる彼にまた泣けてしまうのは。

でも、私はあの手紙がすぐに頭に浮かんで。先輩の言葉も浮かんで。

彼の手を振り払った。


「倫子?」

「もう…分からない。」

「……倫子?」


「もう、信じられないよ。」


 彼が伸ばした手に私は触れず、玄関をとびだした。