ばかって言う君が好き。


「よーし、風呂入ろう。」

「いってらっしゃい。」
 お湯を注いだばかりのコーヒーを、ずずっと立ったまま私は飲んだ。

「倫子ごめん、テーブルの上とか触らないでね。すぐお風呂出るから。」

「うん、全然いいよ?」
 彼はありがとうとつぶやいて、お風呂場へ行った。

“触らないで”
そう彼に言われたことは初めてだった。

単純に今日の書類が特に大事なものだからなのかもしれなかったけれど、その時の私はそう考える余裕がなくなっていて、ただ彼がいつもと違うそう思って、

違和感も止まらなくて。


だから私は彼が座っていた場所と同じところに座って、鞄の中をひょこっと覗いてみた。

お菓子がまとめて入っていただろう、小ぶりなビニールのピンクの袋が半分くらいそこを占拠していたが、中は空っぽだった。

「何もないよね。」
 考え過ぎだよ。自分で自分を笑ってしまった。

彼が食べ終えた包装紙だけでも捨てようと私はそれらを手にして、最後もう一回鞄の中をのぞいた。

「……」
 ピンクの袋を少し鞄の隅に寄せてみる。

ジャー。
彼がシャワーを使い始めた音がした。

「……」
 黒い内面の中、ピンクの袋の下から薄ピンクの封筒がそこに出てくる。

差出人も宛名も書いておらず、封のところにリボンを付けた可愛らしい熊のシール。

シャワーの音が止まった。


「……これ見られたくなかったんだ。」
 びりっびりに破いてしまいたかった。

手に持っていた包装紙もびりっびりに破いて、机の上の彼の書類でさえその衝動に駆られてしまうぐらい、くやしくてくやしくてくやしくて、


悲しくて……


封筒を投げ捨てるように鞄に投げ入れると、私はゴミ箱に包装紙を投げ捨てた。

2、3個床に落ちたそれに見向きもせず、私は冷蔵庫を開けて、作ったケーキを取り出し、指で掴んで食べた。

食べて、食べて、食べて、

指がクリームだらけになるのも、冷たくてひえてしまうのも今はひどくどうでもよかった。

食べて、食べて、食べて。
甘いケーキなはずなのに、少ししょっぱかった。スポンジが少し湿ったりもしていた。

とめどなく落ちる涙がそうさせた。