20分ほど入っていただろうか、髪の毛をタオルでふきながら出てきた私。
「あ、倫子出た?」
「うん。お先ごめんね。」
「いいよ。先入ろうかな~。」
ぐーんと背伸びをしているあたり、相当集中していたみたい。
彼の肩をもんであげようかと、私は彼の背に回った。膝立ちして、背中からテーブルの上をのぞきこむ。
毎日ご飯を食べている見慣れたテーブルなのに、その上には書類がたくさん並んでいて、自分のテーブルでないみたいだった。
「書類いっぱいだね。」
「うん。」
疲れたという口調のうんだった。
「これ読んで入ろうかな。」
彼は一番テーブルの遠い隅に置いていた、一枚の書類を手に取った。
その反動でその下に敷いていた、他の書類が床にカサッと落ちる。
黙って書類を見つめている彼は気づいていないみたいで、邪魔にならない様、私は落ちたそれに手を伸ばそうとした。
「あ。」
とは言わなかった。
思わず声が出なかったあたり、見つけてしまうと心の中で分かっていたのかもしれない。
ただ黙って、私は手をひっこめた。
仕事の書類には似つかわしくない水玉模様やら、ピンクやらの小さな包装紙がくしゃっとなりながらも私を見つめていた。
冬の間だけ敷いている、黒いホットカーペットが憎らしかった。
いっそピンクにしていたら、こんな気持ちにならなかったかもしれない。
黒はゴミが目立つからお掃除のとき便利ですよ、と言った店員さんの言葉を真に受けて、それを選んだ4年前の自分に腹がたった。
4年前、こんな未来が待ってるだなんて、そのころの私は想像もついていなかっただろうけれど。


