そしてカレーにとろみがつき、付け合わせのサラダなどちょうど完成したころだった。
「ただいまー。」
「おかえり」
私は彼を迎えて、彼の鞄を受け取った。朝約束してくれたとおり、彼も少し早い帰宅だった。
「カレー?」
ネクタイを緩めながら、ジャケットを脱いで机の前に座る。
「うん。」
お皿に盛って彼に差し出すや否や、おいしそーう!と直人は満開に笑った。
思わず私も顔がほころんでしまうぐらいに。
「今日もお疲れさま。」
「ありがとう。」
私の言葉にそう言ってくれたのか、カレーを作ったことに対して言ったのかどっちなのか分からなかったけれど、とりあえず笑顔でそう返事してくれた彼に、私はまた笑った。
「今日、どうして早く帰ってきてほしかったの?」
カレーをすくうスプーンの音がカチャっと響いた。
「んー…。」
私はカレーを口に運ぶ。
「久しぶりのカレーだから?」
お皿にこびりついたカレーをすくう彼。
「うん、そうそう!」
熱くてやけどしそうになった口の中のカレーを、無理やり水で流し込んだ。
「カレーは二人で食べたいもんね。」
食べ終わった彼がスプーンを置く。
「あ、鞄どこにやった?」
「ん?そこそこ。」
机の横に置いた鞄を指さす。
「ほんとだ。」
「お仕事するの?」
質問を逃れたことに安堵した私は、最後の一口を口に入れ、彼の分と共に食器を洗い場にさげた。
「んー、ちょっと。」
お仕事モードに入る彼。
集中させてとも、静かにしてとも言わないけれど、その背中が黙って私に語り掛ける。
だから私は決まって他の事をすることに決めているのだけれど、生憎バレンタインを用意している私は、そっちに気づいてほしい気持ちもあって、少し気持ちがそわそわ……。
「倫子、お風呂先入りな。」
「あ、うん…。」
…別に今日食べなくてもいいか。
寝る前彼が気づいて、明日一緒に食べても。
集中している彼を横目に私はお風呂に向かった。


