「気持ちいい。」
「疲れた?」
「うん、ちょっと。」
「そっか。」
「倫子、もまなくていいから、ここ来て。」
彼は左腕を広げて、とんとんと開いた懐をたたいた。私は黙って彼の言う通り、そこに横になる。
「疲れてるのに、腕枕しんどくない?
明日のお仕事疲れちゃうよ?」
見つめ合いながらのおしゃべり。
オレンジのベッドランプだけで彼の顔を見ることは少ないから、ドキドキ胸打つ。
「大丈夫。倫子軽いから。」
「……ありがと。」
「がちめに照れてるね。」
ハハハっと大声で笑う直人。うるさいなーそう言いながらも私も大きな声で笑ってしまう。
「親とちゃんと話してきた。」
彼は私の髪を優しく撫でた。
「うん。」
私は彼の背中に手をまわす。
「俺との思い出ある?って冗談で聞いてみたらさ、おふくろがさ、いっぱい言ってくれたんだよね。」
「うん。」
「俺がおもらししたときのこととかまで、すごい詳しく聞かせてくれて。」
「うん。」
「倫子のおかげ。」
彼は手をとめて、私のおでこに口づけを落とした。
「私は何もしてないよ。」
「してる。」
「してないよ。」
今度は口に落とす彼。
「…ばか。」
私は彼にもっと近づいた。
「あったかいね。」
「あったかい。」
彼も私の背中に手を回す。
「直人。」
「ん?」
「話してくれてありがとね。」
私は彼にばれてしまわないように、服の上から彼の体に口づけをした。
「……ばかだなあ。」
穏やかに彼はそう言った。
私はベッドランプを切った。真っ暗になった部屋、彼の寝息が響く。
私は彼にもっと近づいて、ぎゅっとだきしめた。
「直人……。」
この温かさを、あの人も知っているのかもしれない。こうして抱きしめあって、私の知らない話をしているのかもしれない。
もしかすると、もしかすると――――、
何個も何個ももしが続く。


