私は何度も自身の腕をさすりながら、エアコンのスイッチを押した。

さすってさすってさすって……。
でも服の下にできてる鳥肌はひっこまなかった。ぽつぽつぽつぽつできているらしかった。

「はあ。」
 部屋の中でも白い息がでる。開けたカーテンから、白い雪がちらちら落ちているのが見えた。

「どうりで寒いわけ…。」
 部屋にぽつんと私の声が響いた。

ぴーんと糸が張り詰めたような空気感。冷たい静かな独特な雰囲気。雪が降る日はより強くそう感じる。

エアコンがポンコツなのか、今日が寒すぎるのか、なかなか温まらない部屋。

コーヒーでも飲んで、温まろう…。
そんな私の思いとは逆に、携帯電話が鳴り始める。こんなことまで予定通りいかないものかとため息がこぼれた。

「もしもし。」
 私は耳に電話を当てながら、コップを用意した。

「倫子?あたしだけど。」

「お姉ちゃん、どうしたの?」
 お正月前に少し電話した程度の姉の声。コーヒーをまだ飲んでいないのに、さっきより寒く感じない。

「じゃーん、お姉ちゃん妊娠した。」

「え!お、おめでとう!」
 突然のことに、私の声は一気に大きくなった。

「驚きすぎ。まあまだ3ヶ月なんだけどね。」
 私は準備する手をとめて、机の前に座った。

「母さんとかに言ったの?」

「うん、喜んでくれた。
 健はちょっと泣きそうになってた。」
 あきれがちに苦笑ながらそう言う姉。

あの旦那さんなら泣いてもおかしくないね、私は笑ってそういうと、まあねと姉も笑い返した。