「私さ、ちょっと不安感じてた。」
彼に告げる。
「ん?」
「忙しいの本当なのかあとか。
あんなにくだらないことで笑いあうのに、
私たち、お互いのことはあまり話し合ってなかったんだなぁってふと思っちゃってさ。」
コーヒーを一口。
彼も一口。
「うん。うん。忙しかったのは本当。
倫子と付き合って、初めての仕事忙しい時だったから不安にさせちゃったよね、ごめん。」
「でも俺ね、寝る前倫子の事絶対思い浮かべちゃってた。
大丈夫だよってLINE送ってくれるけど、大丈夫じゃないんだろうなぁとか。
そんな風に強がらせちゃって悪いなぁとか。
早く会いたいなって。」
「うん。」
「俺さ、くだらない冗談に乗って好きとか言えるけど
本気では言えないっていうか、恥ずかしいっていうか。」
「……うん」
直人はそういう人って分かってるからこそ、彼の言葉に私の口から笑い声がこぼれる。
「遠距離みたいだねって話してたじゃん?
俺もちょっと不安になった。
あ、俺の知らない倫子がいるって。
今まで倫子がどんな経験してきたとかまだ知らないんだなって。」
「うん。」
「だから、
今日はとことんおしゃべりしましょう!」
「うん!」
私は彼の目を見て微笑んだ。
「……ということでおかわり!」
彼が近くの店員さんにコップをアピールする。
「またおどけるんだから。」
私はそうやって笑いながらも、彼と同じように店員さんにコップをアピールした。
大丈夫、大丈夫。
この人とならきっと、大丈夫。
私は心にそう言い聞かせた。
まだ告げれていない過去に封をして。


