「お父さんもお母さんもきっと分かってくれてるよ。分かってくれてる。」

「……うん。」
 彼が私を抱きしめ返す。

「でも今は倫子がいるから。……もう大丈夫かな。」
 安心した声色だった。

「そう?」
 彼を見つめる。

「うん。まあやっぱり隙だらけで心配がつきまといますが。」
 彼は悪戯がばれてしまった子供のように、ぺろっと舌を出した。

「ごめんなさい。」

「いいえー。」
 笑う彼。

「大好き。」

「うん。俺も大好き。」
 抱きしめて、キスして、笑いあって。

彼と遠距離恋愛も乗り越えて、同棲もして、ずっと付き合ってきたけれど、この日、はじめて私は彼を知れたような気がする。

「ねえ直人。」

「何?」
 口づけを落とす彼。

「優しい直人も好きだけどね。」

「うん?」

「昨日みたいな強引な直人も嫌いじゃないよ。」
 笑って私はコップを流しに持って行った。

「……倫子!」
 真っ赤になった彼。

今日のところはお酒のせいってことにしといてあげよう。