「渡辺先輩にすごくやきもちを妬いていました。」

「うん。」

「リンリンっていうのもそうだし、
いちいち距離近いし、ご飯だって行ってほしくなかったけど、俺も飲み会行くしなって。

だけどそう思ってること言ったら、男らしくないから…。」

「はあ。」
 ため息をもらす彼。

「倫子は優しすぎんだよ。
普通ね、やきもちごときでこんな風になる彼氏なんか、大抵の女の人は嫌いになるもんだよ?」
 あーやだやだ、そう言って、彼は私の肩にぐりぐりと頭をすりつける。

「そんなことないです。」

「そんなことありますー。」

「すみません、大抵の女の人じゃなくって。」
 そこで言葉が途絶えると、顔を見合って私たちは笑いあった。

「直人の方が優しすぎるよ。
私が直人の立場になったら、もうもっとぎゃー!!!ってなってる。」

「嘘だ。」

「本当です。
私のやきもちやきをなめないでください。」
 また笑いあう私達。

「……俺さ、まあずっと寂しいっていうか、なんていうか
うーん。」

「うん、聞かせて?」

「弟と兄貴いて、俺は真ん中で。

親が俺の事愛してくれてたのは分かんだけど、なんかいまいち実感できなくて。」

「うん。」

「おふくろがさ、体調一時期崩して。

俺が小さいころだったから、俺は結構ばあちゃんに面倒みてもらっててさ。
その後またおふくろ元気になって、弟たちできて。

んー、弟たちは俺と同じようにならなくてよかったなって思うんだけど、どっか羨ましい気持ちもぬけなくて。」

「うん……。」

「親と俺どっか壁作ってて。
申し訳ないって思ってるけど、どうしてもいろいろ拭いきれなくて…。

ってごめんな、こんな話。」
 彼は私から離れるとお酒を含んだ。

「ううん、話してくれてありがとう。」
 彼は私の頭を大事そうに撫でた。

なんでだろう。
直人のほうが私よりも大きいのに。
今は彼が、私よりも小さく感じるのは――。

彼を覆うように私は抱きしめた。
強く強く。