「え、こんな暗いところ入ってくの?大丈夫?」
焦る先輩、もう慣れてるんでとばかりに笑う私。
風呂すぐ沸かさなきゃ、
もう考えていることは直人に繋がることで、「お疲れさまでした」そう告げて、先輩と早々に別れようとしていた私。
でも先輩は私より早く、
「じゃあリンリン、最後に一つ俺の意地悪。」
と告げてきた。
「もう今日は、十分直人関連で意地悪でしたよ。」
私は笑う。先輩も「そうか~?」なんて言って笑う。
でも先輩はすぐにお仕事するときに見せる、まじめな表情に変わって、
私に半歩近づいて、
ささやくように、
「リンリンの事ずっと気に入ってたんだけど。」
って―――
でも私はそう言われても理解できずに、
ただ
なんとなく
意味を聞いたらダメなような気がして、
「……えっと、あ、ありがとうございます。」
冷静に、冷静に。
「意味分かってる?」
「分かってます…。」
「本当に?」
また半歩近づいた先輩。
「分かってますよ!」
先輩の顔を見ずに、ハハハと笑いながら答えた私。
これ以上、先輩とここで話していたら、なにか変わってしまいそうで―――
この関係が変わってしまいたくないから、
私は
「……それでは!」
そう言っていつもの道に入ろうとしたのだけど、
「あっ。」
「あぶねっ。」
がくっとなってしまう私。
私の肩を先輩が掴む。
「倫子…?」
聞こえてきたのは「リンリン」じゃなかった。
「なんで……。」
大通りの遠く離れた先。
女の人と一緒に並んで立つ、直人がそこにいた。


