「乾杯!」
「お疲れさまでした!」
私は先輩と予定通り、会社近くの居酒屋に来ていた。
混んでいる店内。
オレンジ色の明かりが照らす中、会社帰りと思われるたくさんの人たちが何組も飲んでいるみたい。
カウンター席しかないかなと思っていたら、先輩が予約を取ってくれていた様で、柵で区切られた4人席のテーブルに向かい合わせに座って飲む私達。
「先輩しっかりしてますね。」
私が笑ってそういうと、
「そう?」
当然でしょといった口調で私に奥の席に座るよう誘導してくれた。
直人は予約なんてしない人だからな、そう笑ってしまいそうになりながら。
「リンリンと二人で飲むのはじめてだよね。」
注文した枝豆を口に入れる先輩。
「え?あれそうでした?」
「そうだよ。
ほら、二人で飲もうってだいぶ前なったけど、結局俺が忙しすぎて、年末の飲み会でいいかなってなって無くなったじゃん。」
「…あー!そうですね。
先輩ここ2、3年忙しかったですもんね。」
顔を少しゆがめて、私も枝豆を食べる。
「リンリンさ、神沢さんとどれぐらい付き合ってんの?」
「えっと、一緒にお仕事をさせていただいたすぐ後ですね。
もう、何年だろう…。」
「長いね。リンリンからはアタックしなさそうだし、神沢さんから?」
「そうですねー、最初は苦手だったんですけど、彼優しくて。」
進むビール。直人の話をするのが恥ずかしいからかな。
「リンリン可愛いなあ。
神沢さん可愛くて仕方ないだろうね。」
頬が少し火照る感覚がした。
男の人に褒められることに慣れていないから、お世辞って分かっていても、つい過剰に反応しちゃうんだよね。
そんな自分を気づかれてしまわぬよう、私はすぐに話を変える。


