うなだれるような暑さの影はすっかりなくなっていた。


ピンポーンと携帯が鳴り響いて、

『あと5分で店つくよ。
先に飲み物頼んでていいから。』
 直人からのメッセージ。

そして、彼との待ち合わせ。
おしゃれな音楽がかかる喫茶店。ぬくもりを感じる店内。レンガ造りの壁に、ヒノキの床。
ぷ~んと香るコーヒーのにおい。

ところどころに飾ってある植物が、ドキドキしている心を少し落ち着かせてくれる。


既に窓際の二人席に腰かけていた私は、

もう頼んでいますよ~
なーんて思いながら、砂糖1個入りのコーヒーを一口含んだ。


約1ヶ月ぶりの彼。

隣の席の二人組の女の子たち。
話の内容までは聞こえないけど、表情からするに恋愛話?

店内奥のカウンターに座ってる男女2人組、ちょっとまだ間が空いてる感じはまだ会ったばかり?

なんて考えて、心を躍らせてしまう。


そんな簡単な人間観察にも飽きると携帯を起動させ、また時間を確認する。

1分しかたっていないことにくすっと笑いながら、私は彼のLINEの画面を開いた。

たまにしてしまう、
『彼とのLINEを見返す』という行為。

女の子ならきっとしてしまうそれ。
にやにやしちゃうその感じ。


『ちょっとした遠距離みたいだね。』

なかなか会えなくて、私は彼にそう文字を送っていた。

『そうだね。
でも倫子となら遠距離でも大丈夫かな。信頼できるし。』

『ばか笑
でもあたしはもう遠距離はしたくないかな、』


『なんで?』


『んー、』