お嬢様 × 御曹司

「いらっしゃいませ。」


入ったお店は、本当にオシャレだった。


ウッドな作りに、隅々まで手入れされているガーデン。


メニュー表も藤の葉のデザインで大人っぽい。


そういえば、たけくん部活の先輩の店って…。


あれ?でもまだ私たち中学生だから、部活の先輩って中学生なんじゃ…?


「あら、武士くん。」


「こんにちは。」


声をかけてくれたのは、緑色で統一されているエプロンをきて、胸に『店長』ノプレードが貼ってある女の人。


年は30〜40歳ぐらいかな?


「聖夜、こちら剣道部のユウキ先輩のお母さん。この店の店長さんだ。」


「こ、こんにちは!日野原聖夜です。」


「こんにちは。武士くんがこんなに可愛い子連れてくるなんてね〜。ユウキもびっくりするでしょう。」


そっか、部活の先輩のお母さんのお店。


だから先輩のお店って言ったのか。


先輩の名前は、ユウキさん。


「好きな席に座ってね。」


そう言うと笑いながら厨房に消えていった店長さん。


たけくんは慣れているようで、好きな場所をさっさと取ってしまった。


「この席が一番いい。外の庭がよく見えるんだ。今日はあいにくの天気だけどね。」


「たけくんも、お庭とか見るの好きなの?」


私はコートを脱ぎながら聞いた。


たけくんは農業科の次期社長らしいし。


「まあね。男なのにってよく言われるけど。」


「そんなことない!好き嫌いに女子も男子も関係ないわ!」


いきなり大きな声を出したからか、たけくんはびっくりして辺りを見回す。


他にお客がまだいないことが不幸中の幸いだった。


すぐ熱くなっちゃうのは、私の悪い癖なんだよね。


「ありがとう。聖夜ならそう言ってくれる気はしてた。」


「っ、」


取り乱した私でさえ受け入れてくれるような笑顔。


その笑顔を見るたびに、私はあなたに惹かれていくのに。