お嬢様 × 御曹司

話している間もまた一歩、また一歩と進み、神社が見えてきた。


鈴の音も聞こえてくる。


「聖夜、居場所はどこだろうって言ってたよね?」


「うん。」


住まいとかの話じゃなくて、もっと根本的な…。


居場所。


「居場所なら、自分で作ればいい。」


「え?」


居場所を作る?


居場所って元々あるものだと思ってたんだけど…


「それに、君は気がついていないだけで、君の居場所は存在している。」


それはなんとなくわかる。


だから私は首を振った。


「家族の中での私の居場所はあると思うけど、社会の中でっていうと…」


「あははっ!」


いきなりたけくんが笑い声をあげたのでビックリした。


たけくんはおかしそうに私を見つめて言葉を紡ぐ。


「聖夜は急ぎすぎだ。俺たちはまだ中学生だよ?社会に居場所がある方が珍しいだろう?」


え、そうなの?


私、パーティとかたくさん出てるから、なんとなく中学生も社会に居場所があるものだと…


「まあ、間違ってはいない。中学なんて社会勉強の一つだし。でも聖夜。それだって君の居場所はあるよ。」





だって、私クラスでも浮いてるし…


学校に私の居場所なんて…


トントンと空中を手で叩くたけくん。


もう片方の手は、しっかりと私の手を握っている。


「ここはもう、君の居場所だ。」


「っ!」


そう…だ。


なんて簡単なことに、今まで気がつかなかったんだろう。


「それでも満足しないのなら、これから先、自分で居場所を増やしていくんだ。人間は、それを協調と呼ぶんだから。」


「うん!」


今ならわかる。


居場所がない、居場所がないと逃げていたのは、私だ。


居場所は元から作れたんだ。


その居場所を、どう広げるか、他の人の居場所とどう広げるか、それが私の居場所を作るってことなんだ。


1人で溜め込んでいたから、こんな簡単なことに気がつかなかったのかもしれない。