私は反対方向に引っ張られた。


観覧車には彼だけが残される。


「悪いけど、聖夜は俺のものだ。」


その様子を見て観覧車の係員さんは何かを察したのか、勝手に扉を閉めた。


私はその駆けつけてくれたその人に腕を引っ張られ、ベンチまで移動させられる。


でも、決して乱暴な引っ張り方じゃなかった。


私を、大切にしてくれてる暖かさが伝わる。


「聖夜、顔を上げて。」


真横から聞こえるその声に、私は恐る恐るその指示にしたがった。


真横にいるのは、たけくん。


その目は、怒りで満ち溢れていた。


「何してるの。」


「ごめんなさい…」


どうしよ、本当に怒ってる!


こんなに感情をあらわにしたたけくん見たことない。


目も見てくれないし…心のペースが乱される。


どうしよう、どうしよう!


「あのね、俺が何も言わないからって男の子と遊びに行っていいと思ってるの?なに?あいつがいいの?」


「ち、ちがうっ!」


本当は女の子が来るはずだったんだよ。


その子たちと話がしてみたかったんだよ。


新しい居場所を広げてみたかったんだよ。


そういえばいいのに、なんで言葉が出てこないの!


「聖夜は俺が嫌いなの?」


頭を殴られたような衝撃。


なん…で。


そんなわけないじゃん!


それは、たけくんが一番わかってるじゃん!


私は目で訴えかけようとするのに、たけくんはこっちを全く見てくれない。


なんで、なんでなんでなんで!


どうしよう、どうしよう。


どうしようどうしよう!


…昔も何度かあった。


1人で心の中でよくわからなくなっちゃって、呼吸が乱れてくる。


つまり、過呼吸。


恐怖のあまり過呼吸になることは、少なくなかった。


それに、昔は両親が近くにいたし、兄さんもいたし。


でも、今はたけくんしかいないし…


「…⁉︎聖夜?」


どうしよう、どうしよう、どうしようどうしよう!


「聖夜!」