お嬢様 × 御曹司

「いただきます」


私は大きく挨拶をした。


命を頂くから、食べる前にはいただきますを言う。


確かにこれは常識。


でも、農業をほんの少しだけ体験してみて、いただきますの本当の意味がわかった気がする。


肉や魚は、もちろんその命の栄養を私たちに分けてくれている。


野菜や果物も命を分けてくれている。


でもそれだけじゃなくて、その野菜や果物を育てた農家さんに対しての感謝の気持ちも込めて、いただきますを言うんだと思うんだ。


「聖夜様、野菜たべてますね。」


花が信じられないって顔で私を見るもんだから、面白くって吹き出しちゃった。


そりゃ、人間ですもん、食べますよ。


「おばあちゃんの作った野菜は、食べられる。むしろ美味しいよ。おばあちゃんの野菜大好き！」


そう言うと花も聖も口を開けて固まってしまった。


どうも私が好んで野菜を食べるのがありえないらしい。


「な、いったろ？おばあちゃんの野菜を食べれば野菜嫌いなんてすぐ治るって。」


「うん。」


私は笑顔で答えた。