お嬢様 × 御曹司

たけくんのいつも使っている部屋には、臼井さんとたけくんと聖が寝泊まりすることになった。


ちなみに私と花は、おばあちゃんの部屋で寝泊まりすることに。


「久しぶりだから嬉しいわ。若い子たちといると若返った気がするのよね〜♪」


私たちはせっせと荷物を運び、動きやすい服装で玄関へと向かう。


花も同じような格好。


玄関に近い方の部屋がたけくん達の部屋、つまりは男子部屋だから、行く途中で声をかける。


「せっかくですから、畑に何か取りに行きましょう。」


「うん。そのつもりだよおばあちゃん。」


「私も心得ております。」


臼井さんとたけくんの言葉通り、三人とも着替えを終えていた。


一緒に家を出て、玄関で長靴を履く。


私はあまり慣れていないから、少し戸惑ってます。


「え?臼井さんっておばあちゃんの執事さんなの?」


「そう。俺にはまだ専属の執事が付いていないんだ。まあ、大道寺財閥の大奥様だから、俺らぐらい狙われやすいわけ。」


肩をすくめて「まあ、おばあちゃん強いけど。」なんて笑って付け加えたたけくん。


畑に行く途中でそんな話を出してくるあたりが、またたけくんらしいんだけどね。


「強いって?」


「俺の剣道の師匠なんだ。」


それってすごい!


たけくんは全国で5本の指に入るぐらい強いんだ。


そりゃもう、ゆうちゃんといい勝負。


言っとくけど、ゆうちゃん女子剣道全国1番だからね!


「勇輝かい?」


一歩前を歩いていたおばあちゃんには、私の呟きが聞こえたみたい。


「はい。ゆうちゃんは私の唯一の友達で。」


「そうかい。あの子はいい子だねぇ。剣道もメキメキうまくなるし、根性は座ってるし。」


話を聞く限り、ゆうちゃんもおばあちゃんと知り合いってことになる。


さらに剣道が上手くなるとも。


…つまりは?


「勇輝先輩の師匠もおばあちゃん。」


「す、すごい!」


私は目を大きく開いておばあちゃんを見る。


だってだって、全国1番の師匠だよ!


絶対おばあちゃん剣道強いって!


そんな彼女はにこやかに「ホッホッホ。」と笑って首を振る。


「私はそれほどでもありませんよ。なんせもう歳ですからね。今じゃ武士に勝てるかどうか…」


「何言ってるの?」


野菜を取るための籠を持ってずかずかとおばあちゃんを追い越すたけくん。


恨めしそうに言う。


「今まで俺、一回もおばあちゃんに勝ったことないんだけど?」


またまたおばあちゃんは高らかに笑った。


孫のことが可愛くて仕方がないという目で、たけくんを見ているのが私にもわかった。


「弱いほうが負けるのよ。そうねぇ、武士はまだ私より未熟なのね。オホホホホ。」


「!」


親子ゲンカ見てるみたい。


すねちゃったたけくんもかわいい!