お嬢様 × 御曹司

「こんにちは!」


「こんにちは!」


見渡す限り…畑や田んぼ。


家があるのはここと、かなり遠くに一軒のみ。


ちなみに、どちらもとてつもなく大きな平屋。


ビルも建物もないところに来るのは初めてだから、その景色が美しい。


山の中の空気がこんなに美味しいことを初めて知った。


「ごきげんよう。よくきたねぇ。」


中から現れたのは、もう腰も曲がっている、たけくんのお祖母様。


もう今年で89歳になるらしいけど、全然そうは見えない。


「お世話になります!日野原財閥次女の聖夜と申します。この度は私どもを招待していただき…」


頭を下げて挨拶をしていると、ポンッと肩を叩かれて顔を上げる。


そこには、満面の笑みのお祖母様。


「あんたはまだ中学生。そんなにかしこまらないでくださいな。私はただの年寄りです。武士も私には敬語を使わないの。だから、聖夜ちゃんも敬語はやめてちょうだいな。」


「し、しかし、お祖母様。」


「いいのよ。」


また言葉を遮られてお祖母様を見る。


「私は日野原財閥としてのあなたではなくて、武士のお友達としての聖夜ちゃんとお話しがしたいわ。」


あと、わたしのことはおばあちゃんって呼んでね!と可愛らしくウィンクをされて、思わずはいと返事をしてしまった。


あぁ、なんかわかるな。


このおばあちゃんだから、たけくんもあんなに優しいんだ。


「荷物はいつもの部屋でいい?」


靴を脱いで揃え、荷物を持って問うたけくん。


敬語じゃないのを確認して、私もおばあちゃんに言われたように接することにした。


「お邪魔します。」


私も玄関から上がる。


「ここのことは武士がよく知ってるから、わからないことは彼に聞きなさい。困ったことがあれば私か臼井に。」


「はい。」


そしてまた、おばあちゃんは私の肩を叩いた。


それが、スキンシップだって、わたしにもわかった。


「硬くならないでちょうだい。ここはいいところだからね。」


「はい。」